16日午後11時34分ごろ、宮城県と福島県で震度6強の地震が観測された。東北と関東の広範囲にわたって強く揺れ、各地で停電や断水も発生した。特に停電は東京電力の管内で一時200万件を超えていたが、17日午前3時には大半の地域で復旧していた。なお、停電は供給力が大きく減ったため需要を緊急で遮断する「周波数低下リレー」が作動したことによるものではないかとみて調査が行われている。
地震が発生すると、様々な情報が飛び交うが、そこにはデマや流言飛語もある。オカルト系の話題として真っ先に出てくるのが地震の発生を予知した、予言していたというもので、次いで人工地震などの陰謀論が出てくる。
「5月11日に地震が起きる」予言の背景にある「エコノミスト誌の予言」
16日に発生した地震についても、発生直後から「人工地震」のワードがSNSに上がっていた。例えば地震の波形や発生したタイミングに不審な点があるため、人工的に地震を起こして国内外の諸問題に国民の目を向けさせないようにした…というのだ。
「人工地震」という言葉自体はれっきとした用語であり、地殻変動や火山噴火など通常の地震ではなく、土木工事の発破作業や地中探査で人工的に発生したものが人工地震と呼ばれる。他にも核実験などでも大きな地震が発生する。しかし人工地震では震源が浅くなる、波形が自然に発生した地震とは違う点が多いなどの特徴があるため、見分けやすいという。
振り返って16日に発生した地震を見てみると、震源は福島県沖の深さ57キロでマグニチュードは7.4。もし人工地震説が正しいのならば、震源地に核爆弾を凌駕する爆発物を仕込んだということになるが、その深さは57キロ。地殻を通り越してマントル層に達する深さだ。現在人類が掘削によって到達した深度の記録は、ロシア(当時ソビエト連邦)が1970年に行ったコラ半島超深度掘削探査で掘削された深さ12キロが限界である。
ちなみにこの時の掘削探査の計画では深さ15キロを目標としていたが、地熱が180度に達したため12キロで断念している。その後も深部探査や油田の掘削などでこの記録に追いつき追い越そうという計画はあるものの、最終的にはコラ半島超深度掘削坑の記録を超せないままでいる。
なお、日本近海で発生した地震を人工地震と考える人々は、日本の海洋研究開発機構地球深部探査センターの地球深部探査船「ちきゅう」を根拠とすることがある。ちきゅう号は巨大地震・津波の発生メカニズムの解明などを目的として海底の掘削調査を行っているが、ちきゅう号の掘削した深度は最深で7740メートル。到底、地震の震源地には届かない。
巨大な地震が発生すると、様々な情報が飛び交うものだが、人工地震説についてはほとんど無視していいと言えるだろう。気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎氏も、自身のTwitterでこういった主張は「不安や対立を煽るだけの陰謀論」と注意喚起し、「災害時のSNSの情報を上手く見極めましょう」と呼びかけている。
地震をはじめとする災害が発生した時に一番重要な点は、いつ起きても大丈夫なように備えておくことであるのを忘れてはならない。