すべて日本でロケを敢行したという、異色のハリウッド映画が公開されます(写真:©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.)(東洋経済オンライン)
2月27日、「オール日本ロケ」で制作されたハリウッド映画が公開されることをご存じでしょうか。 【写真】ハリウッドが注目した「京都や北海道ではない《日本の名所》」 その作品名は、日本とアメリカの国際共同製作『レンタル・ファミリー』。2025年11月のアメリカ公開以降、続々と世界約80カ国で公開され、この度、作品の舞台となった日本で満を持しての公開となります。 既にアメリカでも大きな評判を呼んでいる本作。25年9月に「トロント国際映画祭」でプレミア上映され、アメリカでの公開初週の興行収入は330万ドルに上り、トップ5入りとなり注目されました。
■「オール日本ロケ」のハリウッド作品は希少 主演は、『ザ・ホエール』(22年)でアカデミー賞主演男優賞を獲得した、ハリウッド俳優のブレンダン・フレイザー氏。東京で暮らす落ちぶれた俳優・フィリップを演じています。 ストーリーは、フィリップがふとしたきっかけで「日本に実在する仕事」である「レンタル家族」の職に就くところから始まります。他人の人生の中で「“仮の”役割」を演じ、それぞれの家族が迎えた人生の節目におけるさまざまな体験をする、というもの。
映画『37セカンズ』(20年)などで知られる日本人監督のHIKARI氏がメガホンを取り、平岳大さん、山本真理さん、柄本明さん、ゴーマン・シャノン・眞陽(まひな)さんなどの共演も見どころのヒューマンドラマとなっています。 【写真を見る】ハリウッドが注目した「京都や北海道ではない《日本の名所》」(19枚) ロケ地は、「レンタル家族」の会社があり、フィリップが活動する東京都内を中心に、長崎県の島原市、そして熊本県の天草諸島。各地への移動や滞在シーンもある、ロードムービー的な側面も兼ね備えていて、主人公と一緒に旅をしているような気分にさせてくれます。
「オール日本ロケ」のハリウッド映画ということで、日本でも公開前から話題を集めていました。これまでの映画では、「日本が舞台」であっても、撮影が日本で行われているとは限らないからです。 17年に公開された『沈黙 -サイレンス-』は、長崎が舞台でしたがロケは台湾で行われ、24年に配信され大ヒットしたドラマ『SHOGUN 将軍』も、ロケのほとんどはカナダで行われたことを考えると、「オール日本ロケ」の本作がいかに希少なケースであるかがわかります。
ハリウッド映画は、一般的に50億〜100億円程度の制作費をかけて作られています。邦画の制作費が平均して3億〜5億円ほどであることを考えると、その制作規模においても大きな違いがあります。必然的に、ロケの規模も段違いに大きくなります。 日本で一部の撮影が行われた映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(21年)は、総製作費102億円のうち、日本国内での制作費が20億円に上り、日本の制作者が常時200名以上雇用されたとのことです。
■日本に海外ロケ隊が来た場合の「経済効果」 政府は、コンテンツ政策の拡充の一環として、25年10月に「33年までに日本のコンテンツ海外売り上げを20兆円(約1300億ドル)へ拡大する」という目標を掲げました。 その経済効果はどれくらいになるのか。算出したデータがあります。 内閣府知的財産戦略推進事務局の実務者懇談会(24年)の資料「ロケ誘致・ロケ撮影に関する課題等について」によると、19〜22年度までに日本ロケが実施された6作品による経済効果として、日本国内における制作費(国内消費額)の合計が117億7300万円、そのほかの経済波及効果の合計が193億6300万円にも上ったとのことです。
ここには、公開後にロケ地を訪れる「聖地巡礼」などの観光で消費された額は含まれておらず、それが加われば、相当な経済効果が生まれていることが推測できます。 ■外国人に人気の「神楽坂」が余すことなく登場 さて、『レンタル・ファミリー』の東京におけるメインのロケ地は、新宿区神楽坂。 神楽坂のメインストリートといえば、東京メトロ飯田橋駅から神楽坂駅付近に至る「神楽坂通り」です。坂の途中にある赤い門の「毘沙門天・善國寺」がシンボルとなっており、今回のロケ地にも選ばれました。
また、神楽坂の魅力が詰まった場所として挙がるのが、裏通り。神楽坂通りから一本入ると、高級料亭や呉服店など、花街として栄えた神楽坂の一面を見ることができます。 特に、石畳と木製の黒塀が特徴の「かくれんぼ横丁」や「兵庫横丁」には、江戸時代の雰囲気が残っていて、最近は特に外国人観光客に人気のスポットとなっています。 神楽坂を上ったところにある隈研吾氏設計のモダンな社殿を有する「赤城神社」では、先日、監督とキャストが再集結してヒット祈願が行われました。
そんな神楽坂は、夏目漱石の『吾輩は猫である』の舞台地となっていることから、数年前から、毎年10月に「化け猫フェスティバル」を開催しています。猫の扮装をした人たちが街を練り歩くパレードで知られていて、本作にも印象的に登場しました。 東京都では、本作の公開を記念して、2月22日〜23日の2日間、神楽坂から近く、本編にも登場するロケ地・新宿歌舞伎町で行われる企画展「東京フィルムワンダーランド」内でイベントを開催します。
「化け猫フェスティバル」を再現し、映画の世界観を一足先に体感できるような仕掛けを作っているとのこと。その他、これまで東京で撮影された作品の展示なども行います。 ■当初は「屋久島」の予定だったが… さらに、ロケ地となった長崎県と熊本県も見逃せません。主人公・フィリップが、柄本明さん演じる「喜久雄」と一緒に訪れるシーンで登場します。 長崎県では、西九州新幹線の停まるJR諫早駅から、島原半島を走る「島原鉄道」に乗るシーンが撮影されました。
島原鉄道は、1911年開業の鉄道会社で、現在は諫早駅と島原港駅の43.2キロを結ぶ路線を運行しています。穏やかな有明海沿いを走る風光明媚な鉄道で、近年、「海に最も近い駅」の1つとして人気急上昇中の「大三東駅」(島原市)で下車するシーンが印象的です。 また、島原半島からは、船で天草に渡るシーンが登場しますが、そこに登場するのが「島鉄フェリー」です。島原半島の南部にある南島原市の「口之津港」と、対岸の天草市の「鬼池港」の間を約30分で結ぶ航路で、観光客にも人気です。
実は熊本県天草諸島には、20年以上活動している“老舗”のフィルムコミッションがあります。そのため、もともとロケ誘致が盛んな地域ではありますが、本作のようなハリウッド大作のロケは初めて。これを機に英語版のロケ地マップを配布するなど、海外からの聖地巡礼が増えるのではと期待に胸を膨らませています。 本作のプロデューサーによれば、この天草でのストーリーは当初、屋久島を想定して、脚本作りを進めていたとのこと。そんな中、プロデューサーとロケーションチームから、天草を最終目的地にするのはどうか、というアイデアが生まれました。
監督が現地へ赴き、実際に島原鉄道とフェリーで天草に渡るルートを巡ったところ、そのロケーションの美しさや、物語に寄り添う風情を感じ、すぐにロケ地に決定したといいます。 観光で天草に行くルートとしては、熊本市内から車で天草五橋を渡るか、阿蘇くまもと空港などから空路で入るのが一般的です。しかし、あえて鉄道とフェリーを乗り継ぐ行程にすることで旅のアクセントが加わり、ルート自体が持つ力を実感できた、と話しました。
また、潜伏キリシタンの時代の舞台となった2つの地域を結んでいることから、観客に旅情や歴史的ロマンを感じさせる効果があるのではないか、と考えられます。 ■「第2次高市政権」以降のコンテンツ制作のゆくえ 2月18日に発足した、第2次高市早苗政権。今後、日本が進めるコンテンツ政策は、外国とも競合しつつ海外作品の撮影を誘致することになるでしょう。 特に注目すべきは、大都市圏以外の地域への撮影誘致です。『レンタル・ファミリー』が試金石となり、今後のコンテンツ政策が地域活性化にどうつながっていくのか、ますます注目したいと思います。
参照元:https://news.yahoo.co.jp/
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