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地下の電場につかの間だけ生じるわずかな異常。これが検出されると、数週間のうちに大きな地震が発生する。そんな現象がこれまで観察されてきた。
もし電場の異常が本当に地震と関係があるものならば、地震を予測するサインとして利用できるかもしれない。だが、これまでなぜそんな異常が発生するのか理由がわからなかった。
今回、信州大学とコンポン研究所のグループによってその謎が解明されたかもしれない。どうやらそれは地下の断層の働きとそこに溜まっていた気体に関係があるらしい。
・地震前に現れる電場異常発生のメカニズムが明らかに
『Earth, Planets and Space』(4月15日付)に掲載された研究では、小型の地震を模した実験によって、揺れに対する石英閃緑岩・斑糲岩・玄武岩・花崗岩のふるまいが調べられている。
その結果、次のような電場異常発生のメカニズムが明らかになった。
縦に走る高角の逆断層を不浸透性の層(断層バルブ)が横切っていると、まるで水門のように地下水の流れを堰き止めることがある。
だが地殻から受ける力や地下水の圧力が高まると、やがて断層バルブに亀裂が入り、圧力が下がる。すると地下水に溶けていた二酸化炭素やメタンが放出され、亀裂を通り抜けていく。
このとき亀裂表面から放出された電子が気体分子に付着する。これによって生じた電流が電場異常の原因だ。
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・気体が亀裂を押し広げ断層に影響を与えている可能性
電流の発生には岩石の種類も関係しているようだ。花崗岩を含む岩石の結晶の並びには乱れがある(格子欠陥)。自然の放射線を浴びるうちにここに「不対電子」がとらえられていくので、より大きな電流が発生するのだ。
また電場異常が検出された後で大きな地震が発生するのは、気体が亀裂を押し広げて、断層をもろくしてしまうからだ。
実際に地震の予知に成功したわけではないので、現時点ではまだはっきりしたことは言えないが、今後の研究によってその正しさが裏付けられれば、大勢の命を救う重要な発見になるかもしれない。